ある一匹のアメンボは語った
「とても、あの人間の挙動は人間に見えない
人間としては不自然だ、排除しよう」
灰色と白の混じった、まぶしい後光の中で天使は言った。
遠くの景色がまるで現実のように鮮やかに映えた
しかし、彼の投げた矢は一直線に彼を貫いた
彼は鮮明な血を胸から噴き出し絶命した。
彼は死んだのだ。
しかしそれは種全体としての際立った損失ではなく
誤差の範囲でしかなかった。
彼の死後
彼を覚えているものは一人としていなかった
結局のところ、彼は
生きていても死んでもどちらでもよい人物であった。
そのような重要度は時々刻々増大する種全体の人数に関して、logスケールで減衰する。
一体今何人の人物が、自分自身を、今、生きていてよいと感じているのだろうか、
おそらく、そのような考えを抱くものは子供か、人生観の凝り固まった老人ぐらいしかいないだろう。
常に平常の人間というものは、流動的で不安定な価値観を持ち、自尊心を保持しえない。
さもなくば、それは選ばれた人間だ。
選ばれた人間は、生きるべきだ。
他人を犠牲にしてでも生きるべきだ。
過去の、悪に塗れた為政者の定める偽善に塗れることなく
自分の意思を貫くべきだ。
残念ながら私にはそれは不可能だった。
人間というのは、過度に高度な知的生命体にとっては
非常に矮小なカビに準ずる生物にすぎない。
しかしながら、私は、矮小なカビにすぎないので
潔く、埋もれるしかない。
美しい音楽を聴くごとに常に思う。
どうして、それを作ったのは私ではないのか。
私は、生きる価値がないのか。
「親が、私が生きていることに対して満足するから良い」
私は、そのような、親を満足させるだけの愛玩動物にすぎないのか。
ロープウェイは高く上る
天国に向かって高く上る
青色だった空はやがて黄色にグラディエーションし始め
夕日色の空へと姿を変える。
みんな死んでしまえ。
静寂な世界こそが、最も美しい世界だ。
誰も苦しまない、誰も悲しまない。
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